(50) ゼニゴケ (50) ゼニゴケ


(解説)北海道から九州まで広く分布。世界各地でも見られる。平らな葉状体で幅は1センチ内外、二またに分かれる。雌雄異株。人家周辺に多く半日陰の湿った地面に多く見られる。


 ケーブルカーの追分駅を右に見ながら、女坂の石段を行く。左側は急斜面の雑木林で、所々に崩れ止めの石積みが見られる。石積みは古いものと見え、灰緑色の色紙を細長くちぎって張り付けたようなコケが目に付いた。
「ビンボウゴケに覆われているわ」。同行者が立ち止まってつぶやいた。
 住宅地の庭先でもよく見かける種類で、日当たりの悪い湿った地面にいつの間にか覆うようにして生えることから、嫌って「貧乏ゴケ」と呼ぶ人が多い。そういえば、屋敷内や休耕中の畑の草取りをまめにしないと、いつの間にか生い茂って花を咲かせて種を飛ばす草を「貧乏草」と呼んだりする。植物にとってはいい迷惑だが、人間の都合からみれば当を得た名前なのであろうか。
 ところが、このコケにも「ゼニゴケ」という立派な和名が付けられている。「ゼ二ゴケ」は「銭ゴケ」だとすると、名前の由来を知りたくなる。
「コケの上面に小さなおわん状のものがたくさん付いているわ」。傍らから再びつぶやきが聞こえた。
 わん状のものは、仲間を増やすための無性芽を生み出す器なのだが、ルーペでのぞいて見てその意外性に驚いた。拡大されたわん状の中から金色のコインがあふれ出し、周りにこぼれているのだ。それだけではない。コイン形と思っていた無性芽の両わきにはくさび状の切れ込みが入り。地図で使われる“銀行マーク”そのものをかたどっていたのである。