(47) エンマコオロギ (47) エンマコオロギ


(解説)ほぼ日本全国に分布していて、個体数も多いコオロギ。わが国に住んでいるコオロギの中では一番大型の種類である。道端のちょっとした草むら、家庭菜園、農家の庭先などで広く鳴き声を聞くことができる。


「うそをつくと、えんまさまに舌を抜かれるぞ」。親からよく言われた子どものころを思いだす。えんまさまの鋭いまなざし。かっと開いた口、その恐ろしい顔つきは、地獄の恐怖を連想したものなのであろう。
 ところで、秋に鳴く虫の中に、その恐ろしげなえんまさまの名をもらったコオロギがいるから不思議である。その名はエンマコオロギ。鋭い目つき、黒く漆光りした額、その顔つきからは納得できるものがある。ところが、そんな外見に似合わず、鳴き声は優美である。
 草原の中から「コロコロコロ、リー」と、鈴を転がすような鳴き声がしたら、エンマコオロギなのである。
 単独でいるときには、「コロコロコロ‥‥リー」と離れたところにいるメスに向かって呼び鳴きをする。
 メスが近寄ってくると「コロコロリーリー」というラブソングに変わり、メスと一緒になれたときには、少し低い声で「リーリー」と鳴く。
 また、オス同士が出合ったときには、「リッ、リッ」と鋭い鳴き声を発し、お互いをけん制しあう。
 私たちには美しく聞こえる虫の声も、彼らにとっては、仲間同士でしのぎをけずる情報合戦の場なのである。