(37) コチャダイゴケ (37) コチャダイゴケ


(解説)春から秋遅くまで枯れ木や朽ち木で見られるキノコらしくないキノコ。直径4~5ミリ、高さ5~10ミリ。10個位の胞子の詰まった粒が入っている。食毒不明。


 大山山頂の雪景色を後に急な山道を下り始める。登山道は人の往来と雨水の流れによって深くえぐられている。土止めのために作られた階段は木枠だけが残り、まるで陸上競技のハードルを並べたようだ。
 木枠をまたぐと、その上に直径5ミリほどの小さなキノコが幾つも付いているのが目に止まった。ポケットからルーペを取り出してのぞいてみると、コーンカップの中にマーブル状のチョコが幾つも詰まっているお菓子に見え、思わずのどがごくりと鳴った。
「足場の悪い道を急ぎ足で歩いたので疲れたかな」。そう一人つぶやき、紅茶をカップに注いで一口飲んだ。そのとき、カップの底から紅茶のしずくが一滴、キノコの上に落ちていった。するとどうだろう。カップの中のマーブルがしずくに打たれ、外へ飛び出したのである。
 このキノコの名はコチャダイゴケ。始めはカップの口は白い幕で覆われている。やがて熟すとそれが破れ、胞子の詰まったマーブル状の粒が現れ、雨の日ともなれば雨粒の衝撃によって粒が遠くに飛び散る仕組みになっているのだ。
 自然はルーペの世界である微小なところにも心を注いでいる。その芸術性と機能性を備えた発想には、我々人間も学ぶことが大きいのではないだろうか。