(35) アザミ (35) アザミ


(解説)アザミはキクの仲間。一個に見える花は、たくさんの花の集まり。花の色は紅紫色で羽毛状の冠毛があり、風で飛散する。日本では55種、県内では12種が知られる。


 日陰道を歩いている時のことであった。
「このアザミ、何アザミかしら」
 振り返ってみると、すらりと伸びた茎の先に紅紫色の頭状花をつけたアザミが田を支える土手に何本も立っていた。だが、よく見かけるそれとは違い、花の付け根にあたる総苞は長く鋭いとげになっている。
 一人が早速図鑑を開いてみるが、当てはまるものが見当らない。この辺りで普通に見られるアザミは、すっと伸びた茎の先に上向きに花を咲かせるノハラアザミか、茎は枝分かれして葉に鋭いとげがあるタイアザミなのだが、どちらのアザミでもなさそうなのだ。
「ハナガサアザミとでも名前を付けておきましょうか」と一人が言う。今年の夏、山形で見てきた花笠踊りを土手のアザミに見たという。別の一人が、「工リマキアザミがいいな」と。ちょっと古くはなったがエリマキトカゲを臥い出させるからだという。植物たちに付けられている名前は、きっとこのような過程を経て人々の間に広まっていったのだろう。
 さて、このアザミを細かく観察すると、どうもノハラアザミとタイアザミの両種の形質が混ざり合っているように見える。日陰道は長い歴史を刻みつつその姿を私たちに見せてくれる。さてはこの土手のアザミ、その自然が長い時間の中で作り上げた作品なのであろうか。