(30) ウラシマソウ (30) ウラシマソウ


(解説)雌雄異株。花の中心にある肉穂の元にたくさんの花を付ける。肥料による影響を受け、栄養が良ければ雌株、悪ければ雄株になるという変わり種。毒草とされ、食べると激しい「えぐ味」がある。


 山道を歩いていると、ウラシマソウが目にとまった。
 花は、仏炎包(ぶつえんほう)と呼ばれる一枚の大きな花頭巾に包まれている。その中心にある肉穂の先は五十センチほどもあり、まるで釣り人がたれる糸のようである。その姿は、マムシが鎌首を持ち上げた形に似て、どこか怪しげな雰囲気を漂わせている。
 仏炎包の先をつまんでロート状の花に顔を近づけると、花とは思えない異様なにおいが漂ってきた。「何のにおいだったかな?」と考えてみたが、どうしても思い出せない。すると「アユのにおいですよ」と同行者の一人が答えを出した。
 花の中をのぞくと、底の方に小さな蚊やハエが何匹も人っている。花の上から飛び込んだのである。虫たちが外へ出ようとしても花の内側は滑りやすく、登っていくことができないらしい。しかし、雄株の花の底には小さな穴が開いていて、体中に花粉を付けた虫は、その穴から外へと飛んでいくことができる。ところが、雌株の花には抜け穴がない。雌花に人った虫は、出口をさがして歩き回り、体にまとった花粉を雌しべに付ける。そして、哀れな最期を遂げる…。
 ウラシマソウの怪しげな花の仕組みは、遺伝子の連続性から編み出された不可思議な知恵なのであろうか。