(29) オオイヌノフグリ (29) オオイヌノフグリ


(解説)ずっと昔から春の野を飾ってきた花のように思えるが、実はユーラシア、アフリ力原産の帰化植物。その歴史も浅く、明治の中ごろに東京の上野 周辺で見られたのが始めといわれ、今でほ全国に広がっている。花は朝 開いて午後にはつぼむ。以前ほ「一日花」と思われていたが、一日から 三日ほどの命らしい。


「オオイヌノフグリの花が、こんなにたくさん咲いている」。だれかがささやいた。まるで、小さな星をちりばめたように、コバルトブルーの花が輝いている。「“星のささやき” と呼び名を変えてあげようか」。別のだれかがつぶやいた。
 オオイヌノフグリの花と一日ゆっくり付き合ってみると、不思議に思えることが多々ある。花は朝つぼんでいるが、やがて日が高くなり地表付近の温度が15度を超えると、どの花もゆっくりと開き始める。そして、昼前までにはすべての花が開花する。開花温度の15度は、花の受粉を助けてくれる昆虫の活動温度と合致している。しかし、春早い今ごろは昆虫の動きも少なく、ハナアブなどオオイヌノフグリの花を訪れる昆虫の姿はほとんど見かけられない。ところが一つ一つの花をよく見ると、すでに実ができ始めているものや雌しべの先に花粉がしっかりと付いているものがある。不思議だ…。
「両腕を開いたように突き出た二本の雄しべが、手を合わせるように雌しべを挟んでいるよ」。お弁当を食べ終わった一人がこう叫んだ。ル1ぺでのぞいてみると、白い花粉の粒がしっかりと雌しべの先に付いている。昆虫の訪れがなくて受粉されなかった花が、雄しべを動かして自分の力で雌しべの先に花粉を付けようとしているのだ。
 直径8ミリほどの小さなオオイヌノフグリの花。この花のどこに、たくましく生き抜く知恵が隠されているのだろうか。