(20) カジカガエル (20) カジカガエル


(解説)雄の体長は平均42ミリ。雌は63ミリ。山地に分布し、川幅のある渓流やその付近に生息する。緊殖期は4〜8月。雄は水から出た岩の上に縄張りをつくり、盛んに鳴いて雌を呼ぶ。産卵は水中の岩の下などに行う。


 日向川沿いの道を歩いていると、「フィフィフィフィ…。フィーヨ、フィーヨ、フィーヨ…」と玉を転がすような澄んだ鳴き声が響いてきた。同行者が「鳥の鳴き声ですか」と尋ねてきた。
 岩を刻み、水しぶきをあげながら走る渓流をのぞき込んでみたが、何も見当たらない。双眼鏡を取り出し探してみると、流れの中から顔を出している岩の上に小さなカエルがちょこんと座っていた。カジカガエルである。
 かはず鳴く 千南構河に かげ見えて 今か咲くらん 山吹きの花(万葉集)
 秋に、もの悲しく鳴く山の鹿に対して、カジカガエルの美声は河の鹿荷鹿)として古くから歌に詠まれ、多くの人に親しまれてきた。江戸時代には座敷内に置いた水盤で飼育し、その鳴き声を愛でたという。カエルの鳴き声を鑑賞の対象とした風習は、わが国独自のものであるといわれている。
 数多く生息していたカジカガエルも、近ごろでは、各地でその数を減らしている。先人が永く付き合ってきたカジカガエルの鳴き声が響き渡る渓流を、カエルのためにも、我々人間のためにも残しておきたいものである。